診療報酬は、既に説明しましたが、医療機関が行った診療行為に対して支払われる報酬のことです。医療行為には点数が決まっていて、その点数に応じて、7割分が健康組合から支払われます。
保険者とは?
健康組合と書きましたが、正しくは、健康保険組合、全国健康保険協会、共済組合、市町村のことで、「保険者」といいます。
大企業はそれぞれ独自の健康保険組合を持っており、約1,400の健康保険組合が存在します。大企業の従業員は各健康保険組合に所属し、「組合健保」という健康保険に加入します。
中小企業は各自で健康保険組合を設立することは大変なことなので、従業者は「全国健康保険協会」に所属します。これは全国にまたがる非常に大きな組合です。全国健康保険協会の運用する健康保険は、「協会けんぽ」と言います。
公務員、教師などは、それぞれの属する共済組合に所属し、共済組合健康保険に加入します。
自営業者は、市町村が運営する国民健康保険に加入します。
要するに、「保険者」とは組合のことです。組合が運用している保険システムを「健康保険」といいます。組合の種類により、健康保険の名前も少しずつ異なるということです。ややこしいので、〇〇組合健康保険と名称を統一して欲しいですね。
まとめると、保険者が組合に入っている従業員(被保険者)や会社からお金(保険料)を集め、それを元手に健康保険システムを運用し、医療機関に医療費を支払っているということです。
皆さんが会社で働いているなら、会社の健康保険組合(保険者)に保険料を給与から徴収され、会社も保険料を払い(労使折半といって、会社が半分支払っています)、そのお金を健康保険組合が運用し、皆さんが医療機関にかかった時に、7割分を健康保険組合が医療機関に支払うというシステムです。
「保険者」、「健康保険組合」、「被保険者」、「健康保険料」、「労使折半」、「健康保険証」、「診療報酬」、「健康保険」といったこれらの用語の違いを理解する必要があり、ストーリーとして覚えるのが一番良いでしょう。
しつこいですが、保険者とは健康保険組合のことで、大企業を例にとると会社が運営しており、会社の従業員は被保険者として健康保険組合に加入しています。毎月、給与から健康保険料として費用が徴収され、その費用を元手に保険者は健康保険というシステムを運用しています。被保険者には健康保険組合に加入していることを証明する健康保険証が渡されます。
会社の従業員(被保険者)は、病気になると医療機関を受診します。その際に、健康保険証を医療機関に提示して、自分はこの健康保険組合(保険者)に入っているから、そちらへ医療費の7割を請求するよう求めます。診療が終わると、医療機関はかかった医療費(診療報酬)を算出し、3割分をその従業員(被保険者)に請求します。7割は診療報酬請求書(レセプト)により、健康保険組合(保険者)に請求する といった流れです。
審査支払機関とは?
保険者は、診療報酬点数のルールに従って、医療機関に報酬を支払います。しかし、医療機関からの請求をそのまま全て認めると、過剰請求されている可能性もあり損をすることになります。そのため、保険者は医療機関からの請求が正しいかを審査しなければなりません。しかし、診療報酬は複雑で各組合が独自に審査を行うことは困難です。そこで登場するのが審査支払機関、泣く子も黙る「支払基金」と「国保連合会」です。
支払基金とは、「社会保険診療報酬支払基金」の略で、国保連合会は、「国民健康保険団体連合会」の略称です。なぜ泣く子も黙るかというと、医療機関の請求を厳しくチェックし査定(本来、請求を認めるか認めないか精査し決定するということですが、保険の世界では認めない、つまり却下することを意味します)するので、医療機関からすると恐れられる存在だからです。毎回査定されたレセプトが返ってくると、頭を抱えます。要するに、診療報酬の不正請求ということなので、何か悪いことをしたような嫌な気にさせられます。また、今後同じ間違った請求をしないよう気をつけなければなりません。試験で悪い点数が返ってくるのと似ています。
医療機関は月末になるとレセプトチェックを行います。レセプトとは診療報酬請求書のことで、組合に医療費の請求を行う請求書です。月ごとに請求するルールになっています。審査支払機関に査定されないように、病名に漏れがないかのチェックと、同じ医療行為を何回もしている場合などは、その必要を摘要欄(レセプトのコメント欄)に記載し、診療行為の妥当性を説明します。このチェック作業が結構大変で、医療事務の方は月末大忙しです。